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理不尽な世界で「一線を越える」男たちの生き様に震える。今観るべき大人のための漢映画4選

過大な欲求をしてくる客や、責任を押し付けてくる上司など、大人になると理不尽な事柄に遭遇することも多くなっていく。

経験を経るにつれ、そうしたことにも折り合いをつけてやり過ごすことにも上手くなっていくが、心の奥底では、理不尽な状況に抗い、正面から打破したいという欲求が燻ってはいないだろうか。

今回は、そんな思いを抱える大人の反逆魂に火をつける4作品を紹介する。

ある作品はかつての因縁を拳で清算し、またある作品は、逃れられない田舎町の閉塞感の中で「一人の人間としての矜持」に向き合おうとする。共通しているのは、彼らは決して無敵のヒーローではないということ。傷つき、迷い、それでもなお「自分の居場所」や「誇り」のために一線を越えていく男たちの物語である。

いずれの作品も26年3月1日現在、NetflixとAmazon prime videoの2大動画サービスで鑑賞できる作品に絞っているので、興味を持たれた方はぜひ鑑賞していただきたい。

トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦

香港映画には、『燃えよドラゴン』『プロジェクトA』『男たちの挽歌』『イップマン』など、アクション映画の名作があるが、25年に公開された本作は、間違いなくそうした香港映画の名作のひとつに数えられることになる作品である。

『男たちの挽歌』のようなウェットな抗争劇を、ショウ・ブラザーズから続く香港映画伝統のカンフーアクションで描いており、消えゆく運命にある九龍城と重なりあうような男たちの生き様がとにかく熱く、エモい作品である。

舞台は1980年代、「東洋の魔窟」と呼ばれた香港の巨大スラム・九龍城砦。不法入国者の青年チャンが、ひょんなことから城砦を仕切るロンと出会い、仲間と共に自分の居場所を見つけていく。しかし、過去の因縁にその平穏を破られ、男たちは文字通りの死闘に身を投じていくことになる。

本作の見どころの一つは「スケール感がある中でも泥臭さを感じるカンフーアクション」にある。本作のアクション監督は『るろうに剣心』などを手がけた谷垣健治。狭い路地や湿った壁、無数に伸びる配線など80年代の香港の混沌として空間の中で繰り広げられるカンフーアクションを、現代の最高峰のアクション技術で描き、拳同士のぶつかりあいを手に汗握るものにしている。

そこで生活する人々の匂いまで感じられるような九龍城砦の狂気を感じさせるような作り込みは、そこに行ったことはなくとも郷愁を感じてしまうほど。男たちが命を賭けてまで守ろうとする姿に説得力を与えている。音楽は『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』『リング』『イップマン』などの川井憲次が担当しており、九龍城に焦点を当てたエンドロールは胸が熱くなること請け合いである。

本作は、香港で歴代2位の興行収入となる大ヒット作となったが、日本でも限られた上映館数で興行収入5億円突破の大ヒットとなった。応援上映は満員となり、中には上映中に50回以上も鑑賞したファンもいるほど。男臭い映画にも関わらず、コアファンの中心は30代〜50代の女性だという。

消えゆく運命と戦う男たちの姿は、合理性ばかりが重視される現代において、我々が失いかけている「熱さ」を強烈に突きつけてくる。拳一つで語り合う男たちの絆、そして交わした約束を果たすために立ち上がるクライマックスは、理屈抜きに興奮できることだろう。

作品情報

おんどりの鳴く前に

本作は『トワイライト・ウォリアーズ』の真逆に位置するようなオフビートな映画である。

ルーマニアの田舎町。中年の警官イリエは、汚職が蔓延するこの地で「何も見ず、何もせず」穏やかに引退することを夢見ていた。しかし、ある凄惨な事件をきっかけに、彼は自分の無関心が招いた報いと、町の支配者たちの狂気に直面する。この映画の魅力は、ヒーローとは無縁の「煮え切らない男が立ち上がる姿」にある。

イリエは決して強い人間でも正しい人間でもない。酒に溺れ、周囲に媚び、見て見ぬふりをする「冴えない傍観者」として描かれている。しかし、そんな怠惰な日々を送るイリエが、傍観者であることをやめ、現実に対峙し、足掻こうとする姿には、言葉にできない重みがある。

本作は行間も丁寧に描くタイプの作品だが、映像的なセンスも高く、コーエン兄弟などオフビートなノワールが好きな方は楽しめることだろう。

パウル・ネゴエスク監督の冷徹な演出が、男の孤独と田舎町の閉塞感を浮き彫りにし、観る者の胃をじわじわと締め付ける。沈黙の中に「男の覚悟」が滲み出る、渋く苦い余韻を残す大人のための映画だ。

特にラスト10分間は、この手の作品が好きな方なら、忘れられないシーンとなることだろう。

作品情報

  • タイトル:おんどりの鳴く前に
  • 配信サービス:Amazon prime video
  • 劇場公開:2025年01月24日
  • 上映時間:106分

タイラー・レイク -命の奪還-

「とにかく強い主人公が戦う映画が観たい」——そんな雄としての生存本能を刺激するような映画が本作『タイラー・レイク』だ。

インドとバングラディッシュ両国の麻薬王同士の抗争により誘拐されたインドの麻薬王の息子を助けるために、雇われたタイラー・レイク。バングラディの首都ダッカに潜入し、軍隊をも指揮下に治める麻薬王から少年を奪還し、敵だらけの市街地からの脱出を目指す——。

シンプルだが、「硝煙と血の匂い」に満ちた本作の最大の見どころは、約12分間にわたる「擬似ワンカット」の脱出劇だ。カメラは車内からビルの中、さらには屋上へと、タイラーの背中を執拗に追い続ける。観客はもはや視聴者ではなく、現場にいる市民として、リロードの隙、肉体同士がぶつかる音、容赦のない銃撃など、生々しい戦闘を目撃することになる。

タイラーは決して無敵のヒーローではない。過去に傷を抱え、死に場所を探しているような危うさがある主人公として描かれている。そんなタイラーが、少年を守るために、命を賭けて戦う姿に熱くなれる作品だ。

本作は配信されるや1週間で9000万世帯で視聴され、Netflixにおける1か月の視聴世帯数史上最高記録を、わずか1週間で塗り替えている。

作品情報

レベル・リッジ

本作は、『テイラー・レイク』と同じく、凄腕の軍歴を持つ人物が主人公の映画だが、描き方は真逆。戦わざるを得なくなった男の葛藤や戦術などリアリティに惹きつけられる作品になっている。

元海兵隊員のテリー・リッチモンドは、従兄弟の保釈金を払うために町を訪れるが、腐敗した警察組織にその資金を不当に没収されてしまう。当初は法に基づき穏便に解決しようと努めるが、警察の傲慢な対応により、従兄弟の身に危険が及ぶことになり立ち向かうことを決意する——。

軍隊と戦う『タイラー・レイク』と違い、本作で戦う相手は田舎町の警察組織である。公権力を武器に目的のためにあらゆる手段を使って追い込んでくる警察組織の描き方は非常にリアルで、むしろ絶望度や恐ろしさはこちらの方が上だとすら思えるほどだ。

テリー・リッチモンドが武器とするのは、近接格闘術と戦術的な駆け引きである。派手な銃撃戦に頼らず、近接格闘術や戦術的な駆け引きで、武装した警官隊と対峙していく。

陰湿かつ殺人も厭わない腐敗した警察組織との息を飲む攻防戦が見どころとなっている本作は、批評家からも好評を博しており、第30回クリティクス・チョイス・アワードではテレビ映画作品賞を受賞している。

作品情報

  • タイトル:レベル・リッジ
  • 配信サービス:Netflix
  • 劇場公開:なし
  • 上映時間:131分

まとめ

理不尽な現実や閉塞感に抗い、自らの矜持を貫こうとする男たちの姿を描いたこれらの4作品。彼らは決して無敵のヒーローではなく、時に傷つき、迷いながらも、守るべきもののために一線を越えていこうとする。

圧倒的なアクションで魅せる『トワイライト・ウォリアーズ』や『タイラー・レイク』、静かな怒りと覚悟が滲む『おんどりの鳴く前に』や『レベル・リッジ』。アプローチは違えど、どの作品も「自分らしくあるための戦い」を描いた作品となっている。

効率や数字が優先される日常で、心の奥に燻るものを感じたとき。「男たちの生き様」にどっぷりと浸ってみるのはいかがだろうか。

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